2009年5月26日火曜日

09 第6回

第1課題:動くおもちゃのしくみを説明するインフォグラフィクス(その3)

今日は第1課題のプレゼンテーションです。

表現を批判的に観る練習


まずは教室の壁に全作品を掲示し、展覧会形式で作品の鑑賞と表現の共有をおこないました。
30分ほどかけてじっくり眺めてもらい、最もベストと思われる作品に、記名した付箋を貼るという方法で一票を入れます。これは、他人の作品はある程度冷静に見ることができるので、そこから得られた視点を自分の作品の置き換えて見直してみることで、自分自身の問題意識としてとらえてもらおう、という思いがあっての活動です。自分の中の世界だけで考えて表現していても、進歩はありませんから。

私もひとつずつ作品をチェックしつつ、聞こえてくる学生たちの会話の中には、「結構良いところに気づいてるじゃん」と思えることばもありました。


投票数の多かった学生の作品は、投票した人たちが何を評価したか、作者がどういう意図で表現したかを、それぞれ発表してもらいました。

その後は、全員で作品一点ずつを順に観ながら、原田が解説やアドバイスを加える、というカタチで表現のポイントを共有しました。作品の一部を紹介します。

これらの作品は表現の視点が明確で、あと3歩くらい先を目指してくれれば、かなり良い作品になると思われます。

一方、全体の傾向として、下記のようなネガティブな特徴がありました。
・モノのカタチにとらわれてしまい、目的である「動き」の仕組みや特徴表現がおろそかになている。
・一番大事な説明ほど、文章による文字表現に頼っている。
・画面を表現要素で埋め尽くしてしまい、余白のコントロールができていない。
・各要素間の関係や順序がレイアウトとして表現しきれていない。
・表現全体の中での「線」の意味付けが曖昧。
ちょっと辛口でごめんなさい。




これらは、アイデアスケッチ段階で検討できる、検討すべきポイントです。今後はぜひ、意識してくださいね。
良かったところ?うーん、ソフト(Illustrator)はそこそこ使える、ってことが解ったことか。


作品へのコメントと、共有した「知識」をふまえ、作品をブラシュアップして次回再提出としました。一回作ってたまたまできたもので満足するのではなく、作ったところが始まり、というのを今年は徹底してやってみます。

次回予告


※今日の愚痴コーナー
どう数えても全員投票してない…。選べない?気を使う?良い作品がない?笑わせないでくれ!表現者である以上、常に社会からの批判にさらされているのです。逆に、本人も気づいていない魅力を見つけてあげることも必要。本気で勝負する覚悟がないなら、最初からデザイナーなどという職業を選ばない方がいいと思うよ。
…と、どうしてもちゃんとやれない子の方を意識してしまう自分が悲しい。でも基本は、ちゃんとやってがんばっている学生たちの味方ですよ、私は。

2009年5月19日火曜日

09 第5回

第1課題:動くおもちゃのしくみを説明するインフォグラフィクス(その2)


今日はコンピュータ演習室での制作活動です。最初に作品制作にあたって意識すべきポイントを確認して、個別の作業に入りました。

おいしい料理はおいしそうに盛りつけよう

内容の表現については前回しつこく説明した(つもり)なので、今日はレイアウトや作業効率についてのアドバイスをしました。

・レイアウトの基本は「余白のコントロール」と「要素を揃える」こと
・文字組のポイントは「書体」「ウェイト(太さ)」「サイズ」「行送り」
・目線のコントロールこそ視覚表現のカギ
これらは実際にやってみないと解りにくいことでもあるので、次回の作品プレゼンテーションでもう一度、共有したいと思っています。
面白い内容を用意しても、それが面白そうで、詳しく読み解いてみたくなるような見映えを持っていなければ、オーディエンスはわざわざ努力して内容を手に入れようとはしません。これを実践できればこの授業は合格ですな。

カタチに気を取られないで「動き」を追うのだ


表現初心者ほどグラフィックソフトの描画力に踊らされて、おもちゃのカタチをトレースすることに夢中になってしまいがちです。でも、対象のおもちゃをうまく描けば描くほど、その表現はそのおもちゃの制作者のものになってしまいます。著作権などについてはこの授業の最終回で触れようと思っていますが、意匠を写し取るのでなく、そのメカニズムや動きの本質を知識として視覚化することを要求しているのです。難しいでしょ。でも、それがこの課題のテーマです。知識は著作権フリーなんですよ。

繰り返しますがグラフィックソフトは「清書」のツールです


ちょっと愚痴になりますが、あれだけ言っても画面に向かっていきなり絵を書き出す人がいるのが残念です。
紙とペンを使って、頭の中のイメージをスケッチとして外在化する練習をしてください。
スケッチが描ける人は、そのクオリティを上げ効率よく作品化するために、ツールのポテンシャルを引き出してください。ただ綺麗に描けるというだけでは,私としてはモノ足りません。

次回はいよいよプレゼンテーション。期待してますよ。

2009年5月12日火曜日

09 第4回

第1課題:動くおもちゃのしくみを説明するインフォグラフィクス(その1)

動くおもちゃのしくみを説明するインフォグラフィックスを制作する(個人制作)ことが、今回から3週にわたって実施するプロジェクトのミッションです。
条件は次の通り。
・A3用紙(縦横は作品の意図に合うものを選択、斜めは禁止)
・科学博物館に、作品のみ展示されることを想定(おもちゃの現物なしに解る表現)
・おもちゃそのものの説明は写真を用いて可。
 ただしあくまで脇役、写真に依存した作品にしないこと
・作品のタイトルを入れる(作品の見かたを規定する重要な要素です)
・作者の氏名はクレジットとして画面の中に、小さく、上品に入れること。

他の人の仕事をしっかり見よう

授業に臨む心構えについてあえて一言。

出来上がった作品だけ見て、「ふん、こんなものか」と解った気になってはいけません。ヒントはプロセスの中にある。他の人がどんな風にやっているのか興味が無いとしたら、クリエイター失格です。ある程度のレベルまでいけば、「他の人の影響を受けたくない」なんていうかっこいいセリフも通用しますが、まだピヨピヨの初心者レベルでは、自分の視野を狭めるだけです。「盗む」「かぶせる」…教室レベルでは、どんどんやってください。クラス全体が一つのプロジェクトであって、小さな小競り合いのせいで自己満足的でつまらないものしかできないよりも、全員で協力しあって全体のレベルを上げたいと私は思っています。

観察の視点

モチーフであるおもちゃの「見栄え」だけにとらわれてはいけません。「動き」という変化を伴う現象がテーマなのですから、様々な視点を想定して、対象を捉える必要があります。
対象と説明の関係を考えるヒントをいくつかあげておきます。

・最初の問い:これは何ですか?
ラフスケッチと現物のおもちゃを並べて、眺めてみてください。その説明は、おもちゃの動きの特徴を端的に表していますか?
皆さんが持ち寄ったおもちゃを眺めてみると、大きく2種類に分けられます。それは、パッと見でそれがどんなものか解るものと、解らないもの。
パッと見で解るのは、水鉄砲やチョロQ、コマなど。これらはいちいち細かく動きを説明しなくても、絵を見ればどんなモノか解ります。だから表現はその続きから始められます。その原理や面白さを表現して欲しい。
パッと見で解らないものは、まずそれが何かを説明しなければなりません。丸い球体だけど何これ?ボール?コマ?たまご?本人はじっくり観察しているから、「何も言わなくても解るでしょ?」と言いたくなるでしょうが、他の人には何のことやらさっぱり・・・という展開に陥りがちです。要注意!!

・ふたつ目の問い:どこが面白いの?
人は「自分が解りきっている」と思っている事柄には反応しません。また、存在に気づいていないものは全く見えません。表現の入り口で、「こんなの知ってる?」という投げかけが必要だと言うこと。あなたがそれを見つけない限り、作品は成立しません。
具体的な切り口として、「視点」というキーワードを投げかけておきます。

0:おもちゃの動きを説明するためには、まず「そのおもちゃは何」なのかが解らなければなりません(当たり前!?)
+1:おもちゃが動くためには、何らかの操作「インタラクション」が必要です。
+2:つまり、そのおもちゃを動かす人「ユーザ」の存在なしには語れません。
-1:おもちゃは動くための「システム(部品や動くための場所)」を持っています。
-2:おもちゃが動くための「科学的知識」が、これらを支えています。
これら-2〜+2までを行き来しながら、説明してみましょう。

・図にも言語的なルールがある
動きを説明する「図」表現にはいくつかのパターンがあります。

あなたが日常の中で目にしている説明の手法を思い起こしてください。
変化をコマ割りにして並べる方法、多重露光のように変化を重ねて示す方法、始まりから順に要素を書き足していく方法・・・。それを今回の課題作品に応用しましょう。

サービスのし過ぎかも

ヒントを出しすぎると、いまどきの学生はそれしかやらない(は言い過ぎかな)というのが悩みです。が、今年度は「私自身もすべて出し切る」という方針なので、学生からはうるさいジジイだ、と思われてもしつこくやらせていきたいと思って授業に臨んでいます。

今日のゴールは、作品の下書きまでたどりつく、ということで途中に少しづつステップアップのヒントを入れて進めてみました。
次回はコンピュータ室で、清書の作業に入ります。
一人でも多く、面白い作品表現にたどり着きますように・・・。